物語編第3話:夢、そして
家に帰るとロールピアノの入ったダンボールが家に届いていました。
ダンボールに貼られたシールに小さく「ハンドロールピアノ」と書かれていたのを見た時には家族にバレてないかヒヤッとしましたが、大丈夫だったようです。
部屋にこっそり持って行き、電源を入れて、イヤホンを刺して、鍵盤を押してみました。
ドー♫
次に複数の鍵盤を同時に押してみました。
「ジャラララーン♫」
僕の薬指と小指と左手にはビックリするほど力が入らなくて、
20年以上も放置し続けた小指と薬指と左手。
僕はこの時すでに楽譜を買っていました。
その楽譜は
のちに知った事ですがこの楽譜、
かなり上級向けでした。
そんな事はもちろん知りませんし、
初級と上級の見分けすらつきません。
なので初心者でも先生がいる人なら
あまりに弾けないものだから色々と試行錯誤していった結果、世紀の大発見をし、今のスタイルに落ち着いています。
その大発見はまた別の機会にお話ししますね。
僕はこんな妄想していました。
以下妄想
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今日は友人の結婚式。
司会の人が僕の名前を急に出す。
会場の片隅にカーテンで隠れたピアノと、そこに座る僕。
みんなが「あれ?梅ちゃんどこ?どこ?」
とザワついている中、ピアノを弾き始め、カーテンが開いていく。
みんな「えー!ピアノ弾けるの!?!?驚」
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今思えばこの妄想が原動力のひとつだった気がします。
心の中で「forever loveだけは絶対弾きたい!友達の結婚式をピアノでお祝いしたい!ビックリさせたい!」そう決めていました。
さっそく楽譜を開いて練習開始。
「まず右手でサビだけ弾いてみようかなー」
「フォーエバラ〜〜ブ」の部分。
僕はかろうじて楽譜のドレミファソラシドを読む事ができました。
でも、
「これはなんだ?
右手で3つも押すって事?
めんどくさいなぁ。
1つでいいや。
たぶんこの3つのうち2つは飾りつけだろうな、、、
主のメロディーの音だけ押そう」
ボーカルの音と一致する音を聴き分けていくと、
3つのうちの一番上がそれだということがわかりました。
「フォーエバラーブ」(ファードシ♭シ♭ー)
、、、弾けた
ここまで10分。(フォーエバラーブの部分だけだから。)
ふと横を見ると、窓ガラスに映る自分の姿に気づきました。
机の上にピアノがあって楽譜がある。そこに僕がいる。
「yoshikiっぽい。。。」
その日の最後にyoutubeでお決まりのyoshikiの演奏を見て、
自分がいつの日か友達の結婚式で演奏する妄想をして、その日は眠りにつきました。
次の日、
僕は会社にいました。
仕事をしながらも考えるのはピアノの事ばかり。
「仕事をしながらピアノも上達したいな。
その日からパソコンのキーボードを打つのは
右手は薬指と小指だけになりました。
周りからはずいぶん変な子に思われていただろうなと思います。
家に帰れば右手でフォーエバーラブを弾き、
仕事の時間は指のリハビリ運動。
そんな毎日が楽しくて楽しくてしょうがなかった。
右手だけでforever loveを弾けるようになるにはそこまで時間がかかりませんでした。
「猫踏んじゃった」の方がよっぽど難しいと思いますよ。
でも僕の心の中は絶好調でした。
「今日も夢にどんどん近づいてるー!」と
この何気ない毎日が楽しくて、幸せで、その日々の積み重ねの先に、今の僕が存在しています。
思い返せば僕はピアノで挫折した事はなく、
苦しんだ事もありません。
ただひたすらに楽しかった。
その理由は、無理しない事、そして他人と比べない事。
・あの人はあれだけできる。
・あの人はあんなに上達している。
・あの人に比べて自分は劣っている。
・あの人に比べて自分は優秀だ。
僕はピアノを続けていく際に、このような誰かと比較する事はありませんでした。
たぶんそれは、yoshikiさんだけを一切の曇りなく追いかけたからだろうなと感じます。
yoshikiさんのように友達の結婚式で演奏する日をひたすら妄想し、そのワクワクする感じをずっと感じていました。
その世界には、自分とyoshikiさんしか存在しません。
世の中は誰かと比べる事でその人の価値を決めてくるかもしれません。
学校のテストや会社の評価も。
その人を数値化して同じ基準で評価されるかもしれません。
ですが同じ土俵に上がって戦うとなれば、それは仕方がない事かもしれせん。
同じ土俵の人生なんてありません。
自分の見てきた景色、
その時感じた感情、
その時とった行動、
そのストーリーを紡いできたのは自分だけなのです。
「ピアノを始める」
これは今この瞬間にも沢山の人たちが行動を起こしています。
つまりよくある"ありきたりな事"です。
僕もその世に溢れるありきたりな行動をしたにすぎません。
でも、そのありきたりな行動は、この世界にたった一つの物語として僕の人生の中で輝きます。
人生は比べられないもの。
かっこ悪くても、不恰好でも、
それはあなたの物語の中で唯一無二に輝くのですから。
自分を大切にしてあげてください。
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