物語編第2話:ピアノを買う

大学を卒業しついに社会人になりました。


ヴィジュアル系の金髪を泣く泣く捨てた僕はなんとも言えない居心地の悪さの中で、会社員としての生活がスタートさせました。



みんなと同じ服、似たような髪型、



僕「なんで社会って個性を潰すような事をわざわざするんでしょうね?」


当時の僕はトゲトゲしていたので、聞かずにはいられませんでした。


?さん「まぁそういうものだからねー」

??さん「社会ってそういうもんだよー」




僕は社会のシステムを飲み込めずに、ただただイライラしていたのでした。




時代はリーマンショックの大不況




会社に入ったものの仕事は無く、

デスクに座ってひたすら教科書を読むという毎日でした。



「やる事がまったくない」



教科書を眺めながら、心の中で独り言を唱える毎日。


「僕の小指と薬指全然動かないな。


子供の頃からピアノやっていると動くようになるのかな。

僕はもう手遅れか、、、


ん?


手遅れ?
そんなもんあるか!」
などなど



手遅れなんてないと思いたくないから、小指と薬指を動かす練習をしてみました。



そしてまた独り言を唱えます。

「yoshikiみたいにピアノ弾けたらいいな。


僕って〇〇ができます!って言えるものが何も無いし、それがピアノだったらかっこいいよね。


誰かの結婚式でサプライズでピアノ披露とか最高すぎる。


お前ピアノ弾けたの!?って言われたい。。」




その妄想がやがて、僕を現実の行動に導いていくのでした。





「ピアノやってみようかな、、、」


そんな思いがだんだんと芽生えていったのです。



その思いは日に日に強くなり心の葛藤が始まっていきました。



「買ってしまおうか、、、ピアノ。」


「でもそんな簡単な買い物じゃ無いよな。。。」


「キーボードは安いけど、大きいし挫折した時捨てるの大変そうだな。」


「簡単に捨てられるピアノなんてあるのだろうか、、、、、、汗」





僕は心の中で四六時中会議をしていました。




僕はピアノを始めたとしても続くとは全く思っていませんでしたから。


だから、やめた時にゴミ箱にポイっと捨てられるピアノがいいなと思っていました。




そんなピアノが世の中に存在するのか、、、




僕は家に帰りピアノを検索する。

すると。




あったのです。



ロールピアノ。

くるくる巻いてコンパクトに収納出来る便利なピアノです。


もはやピアノと言っていいのかは謎ですが、当時の僕のニーズにぴったりの品物でした。



・値段安い

・捨てるのも簡単




普通の人ならこの時点で買うかもしれません。


でも僕の場合は、心の中にもう一つ大きなブレーキが存在していました。




それは、周りの目です。





「どうせ続かないでしょ笑」

「ほらやっぱり挫折した笑」

などと評価されるのが本当に嫌でした。


だからロールピアノを買った事も、練習してる事もバレたくなかったのです。




・安い

・簡単に捨てられる

・誰にもバレずに部屋に隠しておける



ロールピアノであれば、全部叶う気がしました。


「・・・・よし、暇つぶし感覚で買ってみよう。!」





こうして誰にもバレずに、人生初のピアノを買ったのです。




今思えば「いつでも辞めれる」という心の軽さが良かった気がします。


やってもいいし、

やらなくてもいい、

好きな時にやればいいし、好きな時に辞めればいい。



こう書くと側から見れば逃げ腰で、やる気の無い感じに映るかもしれないけれど、


・出来なきゃいけない。

・やらなきゃいけない。

・続けなきゃいけない。


僕はこういう荷物はスタートする時には持たない方がいいと、とても思います。


心が身軽だからこそ一歩が踏み出せたし、途中でバテる事なく歩き続ける事が出来ました。



昔ピアノを習っていた友達の多くはこう言いいました。

「先生が厳しすぎて嫌だった。ピアノは楽しく無い。」



僕はそれを聞くととても悲しい気分になります。


「出来なきゃ怒られる。

怒られない為には、うまくならなきゃ、、、」


そんなの、拷問と何ら変わりません。




僕は野球を小学校まで嫌々やっていました。


それなりに上手くなりました。

体育の授業で見本にされることもあったし、

野球が好きな同級生から「上手いね!」と言われる事もありました。


でも、人生で1度も野球を楽しいと思えたことはありません。


野球をやっていると、いつ怒られるだろう、、、怒られたくない、、そんな気持ちしかありませんでした。



僕はその苦しみを知っています。


だから後に僕が誰かにピアノを教えたりする事が、この先の未来にあるなら、絶対にさせたくないと心から思います。






ピアノは本当に楽しいですよ。

次回はそれを沢山お伝えします。





次回、最終話


↓次章:夢、そして

かんとりーまーむ

まーむ=僕 の作る かんとりー=街

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